南洋徒然草

南の島へ移住したオヤジの徒然日記

フィリピン永住ビザ獲得への道(6)

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永住ビザ取得の次のステップである面接と指紋採取に行くため朝7時に家を出たのだが、ケソンシティで大渋滞にはまり移民局本部へ到着したのはアポイントメントから30分も過ぎた後だった。まいったな・・追い返されるかな・・と思ったが、女房が言うには今日はみんな遅刻してるはずだから心配する必要は無いとのこと。面接室のある4階までエレベーターで昇り、ビザ申請の時に受け取った領収書(下の写真)に書いてある面接官のネームプレートを探す。

有った!警察の取り調べ室みたいだ。部屋を見るとガラス越しに小太りのオヤジが座っている。あれ?面接官は女性っぽい名前なんだけど・・。それでも「すみません遅刻して」と謝ると、男はハァ?という表情をした後「面接官は奥の部屋だよ。ついさっき来たとこで今日最初の面接中。今日はスケジュールがかなり遅れるそうだから廊下でしばらく待っててよ」と陽気に言った。

なるほど女房の言うとおりだ。この国でピューリタン的なビジネスマナーを守ってたら早晩心が折れてしまうに違いない。スケジュール上では筆者が今日の一番手のはずなのだが、いつの間にか先着順に切り替わっており、あと2組待たなければならないようなので、4階の廊下で開業してるサリサリでコーヒーを買い、椅子に座ってのんびり待つことにした。

奥のドアを開けると30代の理知的な感じの女性が座っていた。この人が面接官で肩書はアトニ-、日本で言えば検事にあたるエリートだ。「そこにお座りください」と言った後、目の前に置かれた筆者関連のファイル(申請書類一式が綴じられていた)を開き、ゆっくりと無言のまま読み始めた。沈黙の時間を長引かせることで相手に緊張感を与え、交渉のイニシアチブを握ろうということか・・ずいぶん古典的なやり方だな・・。

まあ筆者はこんなゲームなど慣れっこなので沈黙の時間をむしろ楽しんだのだが、困ったことに女房はかなり緊張してしまったらしい。最初の「あなたたちの結婚記念日はいつですか?」という筆者に向けられた質問に対し、女房が全然違う答えを言ってしまったのだ。それも正しいのは月だけで年と日が間違っているという体たらく。見る見るうちに面接官の表情は険しくなり「あなたたちは本当に夫婦なのか!」と言い始めた。

このアホ!毎年結婚記念日には常にプレゼントを要求してくるくせに、この肝心な時に忘れやがって・・。そのあとで筆者が正確な答えを言ったが面接官の疑念は拭えそうにない・・。うーん・・まいったなー・・。

次に「どうしてその日を結婚式に選んだのですか?」と女房へ質問した。「主人の誕生日がゾロ目なので・・主人はいつも縁起を担いでゾロ目を選ぶんです・・なので今回のフィリピン入国もゾロ目の日を選んで・・」と女房が説明すると、面接官はチラッとファイルを見て「結構です」と言った。

3番目の質問は「あなたたちが出会った正確な日付はいつですか?」というエッという内容なので、「1997年の7月ですが正確な日付までは覚えていません」と筆者がよどみなく言い、女房も「私も正確な日付は覚えていませんが、6月の半ばか終わり頃だったと思います。付き合ってすぐに香港返還のパーティーに一緒に出席しましたから」とスムースに答えると、面接官の表情がいくぶん柔らかくなり「それで結構ですよ。むしろ正確な日付を覚えているカップルの方が稀ですから」と言った。

4番目の質問は「二人が移っている写真はありますか?」。よしっ!待ってましたっ!こういう質問が来ると思って女房が過去の写真を山ほど持ってきたのだ。15年前に取り壊された香港のビルや、津波で沖合に流されたプーケットのホテルを背景にした写真が沢山あるし、何より二人とも若々しく今と違って随分スリムなので時間経過を説明できる証拠になるはずだ。「これがそうです」と女房がアルバムを何冊か取り出し面接官に見せようとすると「結構です。しまってください」と面接官が言った。

その後に続く質問は「出会ったのはどこか?」「どういう状況で出会ったのか?」「なぜ出会ってから結婚するまで△年もかかったのか?」「日本へは何回連れて行ったのか?」「子供はいるのか?」「今どこに住んでいるのか?」「なぜその場所を選んだのか」「賃貸か持ち家か?」「あなたが住んでいる家の周辺はどうなっているのか?」「今仕事はしているのか?」「どうやって生計を立てているのか?」であった。

全ての質問が終わると、面接官は「では面談は終了です。この宣誓書に記入した後公証人の認証(ノータライズ)を貰ってから私に提出してください。それからアナタが見せてくれた日本の銀行口座に関する資料(英文の銀行残高証明書と預金通帳)のゼロックスコピーも私に提出してください」と言った。

宣誓書には、夫婦が出会った場所と時期/結婚した場所と時期/現在の居住地と居住開始時期/夫婦の過去の結婚歴、の記入欄と、下の方に署名欄がある。「1階の総合受付の裏に無料の公証人がいます。そこで認証してもらったら4階に戻ってきて私の秘書(小太りのオヤジのこと)に渡せば良いですよ。」と言って退室を促された。ちなみに1階の無料公証人(パブリック・ノータリー)はなかなかの美人でテキパキと仕事をしてくれる。なんだよ・・無料の公証人がいるんだったら隣のビルの公証人に金払う必要なかったな・・300ペソ損した。

エレベーターで4階へ戻ると、小太りのオヤジは筆者のファイルを広げてパスポートコピーやビザ申請書などを抜き出しホチキスでパチンと綴じている最中であった。7枚(=7種類)くらいあったと思う。それから「あんたこれから指紋押捺に行くんだろ?そのためにはこの書類一式が必要なんだよ」と言って書類の束を筆者に手渡した。